RSウイルス感染症について(医長が教える子どもの健康 2019年10月号) |
今年の夏は手足口病が猛威を振るいましたが、寒くなってくるとRSウイルス感染症に注意が必要です。この感染症は1年を通して見られますが、例年冬に流行のピークがあります。
RSウイルス感染症は、その名の通り、RSウイルスが原因の感染症です。このウイルスは、年齢を問わず、生涯にわたり感染します。とはいえ、特に乳幼児期にかかりやすく、 出生後数週から数カ月の間に感染すると重症になりやすい感染症です。乳幼児では、肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占めます。より年長の小児では、気管支炎の10~30%に関与しています。
赤ちゃんの約7割が生後最初の一年間にRSウイルスにかかります。初めて感染したときの症状は、軽症のかぜ様症状から重症の肺炎や細気管支炎など様々です。初めての感染で肺炎や細気管支炎などを起こす危険性は高く、1/3 に至ると報告されています。幼児期においても肺炎や細気管支炎などを起こす危険性は無視できるものではありませんが、その重症度は年齢を追う毎に軽くなります。乳幼児期早期には肺炎と細気管支炎が多いのですが、年齢を追うごとにより軽症な気管支炎が増加してきます。また1 歳以下では、中耳炎の合併がよくみられるほか、突然死につながる無呼吸が起きやすいことも報告されています。
ほとんどの子どもは3歳までに一度はRSウイルスに感染します。一度かかっても何度も感染します。3歳以上の子どもや大人ではかぜ様症状で済むことがほとんどです。また、このウイルスは家族内で効率よく感染が拡がります。特に、乳幼児とより年長の小児のいる場合に、感染が拡がりやすい傾向にあります。通常家族内にウイルスを持ち込むのは、軽症のかぜ様症状を来した年長児や学童などです。感染経路は飛沫(しぶき)と、これらの分泌物に汚染された手指や物品との接触が主なものです。
RSウイルス感染症に特別な治療法はありません。症状を軽くする対症療法や呼吸困難を補助する治療しかありません。呼吸困難が強く哺乳ができない場合や、夜眠れない場合などは入院になります。点滴で水分補給をし、呼吸困難の程度で酸素投与や人工呼吸器で対応します。特に未熟児で生まれた赤ちゃん、心臓や免疫が弱い病気を持っている赤ちゃんは重症化しやすいと言われています。これらの赤ちゃんに対してRSウイルスの抗体が入っている注射を接種して感染を予防します。
医療機関では、RSウイルス感染症を疑う赤ちゃんが受診すると迅速診断検査をします。結果はすぐわかります。この感染症にかかったあとは喘息になりやすいとも言われているため、迅速な対応が大切です。
参考
リンク:国立感染症研究所ホームページ
リンク:日本医師会ホームページ