赤ちゃんの皮膚も常在菌で守られている?(医長が教える子どもの健康 2020年1月号) |
微生物は腸内、口腔内、皮膚などに常在菌として存在します。ママの胎内では、基本的には無菌の状態です。生下時、赤ちゃんは頭の形が変わる程、狭い産道を通り抜けます。そこで、ママ由来の腸内細菌をもらい受けるのです。産道を通らない、帝王切開の赤ちゃんには、しばらくの間、ママ由来の腸内細菌がわずかで、産院の環境下の常在菌が、赤ちゃんの腸内に多く定着します。
代表的な皮膚常在菌を3つ挙げます。
・表皮ブドウ球菌
皮膚表面や毛穴に潜み、汗(アルカリ性)や皮脂を食し、グリセリンや脂肪酸を排します。グリセリンは、皮膚のバリア機能を保つ役割があり、その脂肪酸は皮膚を弱酸性に保つのです。
・アクネ桿菌
酸素がある環境では、殆んど増殖出来ず死滅します。毛穴や皮脂腺に潜み、皮脂を食し、プロピオン酸や脂肪酸を排し、皮膚表面を弱酸性に保つのです。ニキビの原因菌として有名ですが、増殖し過ぎなければ大丈夫。だが、皮脂の分泌量が増え毛穴を塞ぐと、より酸素が乏しい状況となるので、アクネ桿菌が過剰増殖し、炎症を引き起こしニキビになってしまいます。
・黄色ブドウ球菌
皮膚表面や毛穴に潜んでいます。皮膚がアルカリ性に傾くと、増殖してしまうのです。病原性が高く、皮膚炎等を引き起こします。特に手指に傷がある場合、調理中の食品から、黄色ブドウ球菌食中毒となることもあるので、注意すべきです。
アトピー性皮膚炎が悪化すると、黄色ブドウ球菌だけが極端に増え、改善すると黄色ブドウ球菌が減少し、種々多様な細菌が増えるようです。黄色ブドウ球菌は、増殖さえしなければ、皮膚で問題を起こしません。
大人の皮膚の厚さは、約2mm。特に赤ちゃんの皮膚の厚さは、大人の約半分の約1mmです。皮膚の外界と接する最前線は、角質層で3つの重要な「バリア機能」があります。
1.体内の水分や組織が外に出ないように防ぐ
2.外界からの刺激を防ぐ
3.細菌の侵入を防ぐ
赤ちゃんの皮脂は、生後2~4ヵ月以降、一気に減ります。潤っていた肌は、たちまち乾燥肌に早変わってしまうのです。それまで、ママから貰った黄体ホルモンが、赤ちゃんの皮脂分泌を助けていました。皮脂の保水力は、角質層のお助け部隊で、皮膚のバリア機能を担うのです。
お風呂あがりが最も効果的です。角質層の水分量は、入浴後約10分で急激に減少します。また、赤ちゃんは、大変な汗っかき。単位面積当たりでは、大人の約6~7倍の汗腺の数です。汗(アルカリ性)を放置したままだと、アルカリ性に傾くことを好む、黄色ブドウ球菌が増殖します。大変な汗っかきは、赤ちゃんの皮膚が中性に近いことの一因です。よって、赤ちゃんには「弱酸性」の、スキンケアグッズが理想的となります。汚れを落としたら、薄い角質層に保湿剤を補ってあげましょう。
赤ちゃんのお肌の乾燥に気が付いたら、その都度塗ってあげて下さい。基本的に皮膚は乾燥すると、痒くなります。掻き傷は鋭利な爪で、角質層(バリア機能)を剥ぎ取ることです。だから、掻き傷の防止に努めてあげましょう。保湿剤を1日3,4回程度、かなり綿密でも、構いません。お肌の保水力使った、バリア機能を充分に発揮させてあげて下さい。